おすすめ図書の紹介(2018年9月)
2019年01月16日
『心と生き方』(稲森和夫 述,京セラコミュニケーションシステム 編)PHP研究所(けんきゅうしょ)
伊藤 和男
京セラを創業し世界的企業に育て上げた稲森和夫氏の講演をまとめた『心と生き方』には、私たちの日々の生き方を考えるエッセンスが詰まっている。この本は、全体として経営者を意識した講演をまとめたものだが、特に経営者でなくとも、日常をどのような姿勢で生きるべきかについて私たちに示唆を与えてくれる。
稲森氏は、前書きの中で、大学を卒業して初めて入社した赤字続きの会社での出来事として、同期の社員が皆辞めていく中で一人残されたとき、それまでの不平不満の心の持ち方を変え研究に打ち込むようにしたことを例に、心のあり様が人生を変えることに繋がると述べている。
この本は3部構成となっており、第1部では、「素晴らしい人生を送るために」と題して、稲森氏の人生哲学である(人生、仕事の結果)=(考え方)×(熱意)×(能力)という方程式に基づいて、心のあり様(考え方)がいかに人生を生きるために必要であるかを述べている。第2部は、「心と経営」と題され、具体的な経営に際して心のあり方がどのように影響するかに言及し、第3部では、「私を支えた人生哲学」として、明治維新の立役者の一人である西郷隆盛の遺訓集からリーダーの持つべき考え方を紹介している。
私は、この本を読んで稲森氏のあくまで明るく前向きでポジティブな考え方に共感する一方で、その頑固なまでに一旦持った心情を貫き通す心の強さに驚嘆してしまった。京セラを世界的な企業に育てるとともに、KDDIを創り、JALの再建を成し遂げた人ならではとも感じたが、同時に私たちも生きている以上、彼のこうした考え方に学ぶべきだと強く思った。