おすすめ図書の紹介(2019年2月)

『塩狩(しおかり)峠(とうげ)』 三浦綾子
 三浦綾子さんの作品は、「教え」を柱にした作品が多く、塩狩峠はその真骨頂だと思います。
十数年前に、ただ静かな響きのタイトルに惹かれて読み始めたのを覚えています。教えの外にいる私には胸苦しい余韻が残る一冊でした。
 主人公・信夫は周囲の影響を受け「教え」に出会います。誠実な人格ゆえ心の動きに真剣に向き合っていく中で信仰心を形成していくさまが、理解しやすい丁寧な表現で話は進んでいきます。
 病身だが生き生きと生きるふじ子との純愛成就を一心に願いながら、中盤を過ぎた頃、ある事に気付きます。
あれ?峠、塩狩峠、出てこない… その姿は残り少ないページの後半、信夫のまことの信心を試すかのように寒々しく現れます。
 衝撃の結末は到底共感できず、今も虚しさだけ抱えたままです。輝く春が近づいてきましたのに、重たい図書を選んでしまいました。

(ワークショップ四街道 六﨑(むつさき))