おすすめ図書の紹介(2019年10月)

『コンビニ人間』
 第155回芥川賞受賞作品であり、私が村田紗耶香の作品を一気読みするきっかけとなった小説です。 同じコンビニで、18年間もアルバイトを続けている独身女性が主人公。マニュアル化されたシステムの中で生きることに自分らしさを感じる主人公と、周囲の期待とギャップを、ユーモアを交えながら表現しています。
 「普通」の人間にならなきゃいけない。「普通」とは何か? それは大勢の人が「普通」に行っていること、説明しなくても分かること。そういう社会全体の考え方に対して、それぞれの価値観や生き方を持ちながら、どう生きるのか。そういった問題提起を投げかけているような作品です。

『殺人出産』
 間違いなく賛否両論、好き嫌いの分かれる作品だと思います。「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められています。
 世界観があまりにも斬新で、現実と大きく乖離しているように思えますが、『コンビニ人間』と共通した問題提起を現実社会に投げかけていると私は思います。

(百武(ひゃくたけ))