おすすめ図書の紹介(2020年1月)

 今月のお薦めの本は、作家井沢元彦による日本史を題材としたノンフィクション『逆説の日本史』。これは現時点でサピエには第1巻から第23巻までがアップされている、長編に及ぶ日本の通史。
 井沢元彦氏は、日本の歴史を創るのは「言霊、和、怨霊、穢れ」への無意識の信仰に基づく非論理的な日本人の行動と分析し、史料絶対主義を排し、その書かれた、書かれなかった背景をも深く考察すべきこと、「時代で常識とされていたことは記録されなかった」こと及び通史的考察の重要性を強調し、シリーズ全体を貫くテーマとしており、それぞれの時代での史実に切り込んでおり、今までの「なんとなく理解していた歴史的なことがらが、「へぇ~、そうだったのか?」との正に、目からうろこで読み物としてお薦めの本です。
 第一巻「古代黎明編」では、紀元248年9月5日に起こったことが科学的に立証されている皆既日食当日、女王卑弥呼に何が起こったのか? また、建立当時は40メートルを超えていたといわれる巨大建造物出雲大社と大国主命の謎。
 第二巻「古代怨霊編」では、聖徳太子の謎、埋葬されている墳墓には聖徳太子の隣には何故か、男性が・・・。
 第四巻「中世鳴動編」では、伝説的美女、小野小町の謎。万葉集、古今和歌集に秘められた謎とは・・・。 
 第五巻「中世動乱編」では、世界史の中でも戦術の天才といわれる義経の伝説、日本の最初のアイドル義経連戦連勝のその後。また、壇之浦で那須与一が射落とした的の謎とは?
 このように、それぞれの巻での読みどころを書きたいところではありますが、スペースの都合もありますので、以下に、抜粋した部分を記します。
 「果たして魔王織田信長は暴君としての宗教弾圧だったのか。」「日本人が忘れている、信長からの贈り物とは」「全ての日本人が心を打たれる忠臣蔵の真実とは。」「犬公方・綱吉が日本史にどのような影響を及ぼしたのか。」「幕末の英雄坂本龍馬は、果たして・・・」などなど、読み応え満載のノンフィクションです。
 通史とは一人の作家が歴史全般を記述したものですが、例えば、通史の先達には司馬遷の史記があり、日本史でも渡部昇一の『日本の歴史』、『永遠の0』でおなじみの百田尚樹による『日本国紀』があります。これまでの歴史本はそれぞれの分野で、違う作家がかいた、いわゆる時代史でしかなかったのですが、やはり歴史はミクロの視点からではなく、マクロの視点から改めて日本の歴史を振り返るのもいいのではないでしょうか。
 この『逆説の日本史』はサイドストーリーを取り入れながら、とても読みやすく興味を抱かせる内容になっています。令和の新しい時代になった今、日本の歴史は如何でしょうか。

今野 正隆