おすすめ図書の紹介(2020年2月)

『人生でたいせつなことは、みんな「寅さん」に教わった』 辻 正司 著

 この本は「人間関係で悶々としたとき。仕事で壁にぶち当たったとき。困ったとき、悩んだとき、いつも寅さんが私を助けてくれました」という著者の愛情あふれる〝寅さんのススメ〟とでもいうものです。
 1969年(昭和44年)に第1作が公開されてから、最後の作品となった49作目は1997年、阪神淡路大震災の年に公開された最終作。その作品では、災害復興支援の活躍をしている寅さんが登場しているのが最後でした。しかし、令和元年の年末に25年ぶりに新作として50作目が公開されたこの時期に、正にお薦めの本として紹介させていただきます。
 思い起こせば、第一作目は空襲を免れた日本の原風景である葛飾柴又に戻ってきた寅さんの「桜が咲いております。懐かしい柴又の桜が咲いております。思い起こせば、20年前、おやじに頭を死ぬほどなぐられて、プイと家を飛び出してしまったが、毎年桜が咲くころになると、決まって思い出すのが、ここ柴又の桜でございます。」とのセリフから始まりました。スクリーンには満開の桜が映し出され、あの主題歌が流れ出します。そして、それから、昭和の時代は、お正月は寅さんを家族と見に行くことが習慣となっていきました。時が過ぎて平成となっても寅さんはいつでも私たちの心に触れていました。その後、東北大震災をはじめ、大きな災害が起き、被災された方々が避難所で苦しい生活をよぎなくされている時でも、寅さんの映画を上映することで、涙と笑顔とともに、多くの方々が元気づけられていたそうです。
 この本は第一章「人間関係に悩んだら」、第二章「情と義理」、第三章「マドンナ」、第四章「仕事とは」、第五章「人間は何故死ぬのでしょう」、第六章「幸せの本質」…と、それぞれの内容別になっており、寅さんシリーズのそれぞれのシーンに人生の大切なこと、人として日本人としての大切な考え方、あるべき姿…考え方を見出し教えられた。本当に日本人の本当の強さを表した名作シリーズであり、寅さんに逢いに行きたいと、今更ながら思うのです。ぜひ、ご一読いただけるよう、お薦めの本として紹介させていただきました。

今野 正隆