おすすめ図書の紹介(2020年12月)

『ミーナの行進』 著者 小川 洋子 中央公論新社
 1972年の兵庫県芦屋市の洋館に住んでいる伯母さん一家に主人公の朋子が家庭の事情で預けられ、病弱で本を愛するミーナとの交流をつづる二人の少女と家族の物語です。
 私とは生活環境が全く違うが、本を読み進んでいくたびに自分の子供のころの生活が次々と思い出され、懐かしい気持ちになる心安らぐ一冊です。

(のぞみ 伊藤)

『カケラ』 著者 湊 かなえ 集英社
 この本は、田舎町に住むモデルのような美少女が、大量のドーナツに囲まれて自殺したその謎を、彼女に関わった人達へ尋問? のような形で物語を綴った、異色の作品である。彼女の死に至るまでの出来事をいろんな人に聞いていくうちに、同じ事柄について、人の考え方や感じ方がこうまで違うものかと気付かされる。日常の出来事も人それぞれの受け取り方があるので、「自分の枠で考えてはいけないという事を常に頭の片隅に置いておくべきだ」とつくづく思わされた。彼女の自殺の原因は最後まで読んで、「あぁ、そういう事だったのか」とやっと話が繋がった。皆さんも推理しながら読んでみてはいかがでしょうか。感じ方の食い違いがうんだ哀しい結末です。

(のぞみ 小倉)

『風が強く吹いている』 著者 三浦 しをん 新潮社
 箱根駅伝を走りたい。そんな主人公、灰二(はいじ)の思いが、天才ランナー走(かける)と出会って動き出す。駅伝ってなに? 走るってどういうことなんだ? 10人の個性溢れるメンバーが長距離を走ること=生きることに夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指してたずなを繋ぐことで、仲間とつながっていく。・・・風を感じて、走れ! 早くではなく強く?? 純度100%疾走青春小説。

(のぞみ 大矢)

『騙し絵の牙』 著者 塩田 武士 角川文庫
 出版大手の「薫風社」で編集長を務める清水輝也。コミュニケーション能力が高く魅力的な彼が、廃刊の危機に瀕し、奔走します。出版業界、社内の争い、家族との関係など、人間関係をリアルに描きながら、ラストは、驚きへと変わります。ラストまでは題名が不釣り合いなような印象ですが、最後にカチッとはまること間違いなし。一度最後まで読んで、二度目は伏線を回収しながら、読んでください。また、こちらの小説は新型コロナウィルスの影響で延期になっておりますが大泉洋さん主演の映画が、2021年上映予定です。

(のぞみ 鳴田)