おすすめ図書の紹介(2021年10月)

『蔵』 上・下 宮尾 登美子 著 角川文庫 1998年

 大正から昭和にかけて、雪深い越後の造り酒屋「田乃内家」が舞台の物語です。蔵元「意造」はやっと授かった子に、炎のように強い子に育つよう「烈」と名付けます。やがて視力の異常を訴え始める烈。失明、母の死、腐造、家督。波乱な運命に流されていきます。絶望を乗り越え、気丈に父を支える烈と、烈を見守る叔母「佐穂」。佐穂の人間性は胸が打たれます。何より、方言の優しさと宮尾登美子の美しい日本語に心地よく包まれます。

(ワークショップ四街道 六﨑)