おすすめ図書(2021年12月)
『水を縫う』 寺地 はるな 著 集英社 2020年
子供の頃から縫物が好きで手芸部に入ろうとする。いじめられることはなかったが、なんとなく小学生の時からクラスで浮いていた。家族からも「友達がいない子」と認識されている。裁縫が好きで、特に刺繍をしている時がいちばん楽しいと感じている男子高校生が、秋に結婚する化粧気もなく、かわいいものが苦手な堅実な姉にウェディングドレスを作ろうとする物語です。「男らしさ」や「女らしさ」、「普通」って何だろう? 社会の関心ごとともなるこの本を読んでみたいと思いました。
(のぞみ 伊藤)
『糸』 林 民夫 著 幻冬舎文庫 2019年
北海道で生まれ育った高橋連。花火大会で出会った園田葵に一目ぼれをする。彼女が養父から虐待されていることを知り、互い愛し合う二人は駆け落ちまで決行するが、すぐに大人たちによって引き離されてしまう。まだ中学生の連には何もできなかった。それから8年、連は地元のチーズ工房で働き、葵は東京にいた。遠い空の下、互いを思いながらも、すれ違いと別れを繰り返す二人。それぞれの人生を歩んできた男女が再び巡り会うまでの物語です。何度もすれちがいを繰り返し、ハラハラドキドキ、最後はハッピーエンド。皆様に是非読んでいただきたいです。
(のぞみ 大矢)
『本日はお日柄もよく』 原田 マハ 著 徳間文庫 2013年
本日はお日柄もよく…このフレーズどこかで聞いたことありませんか? そうです。結婚式の披露宴です。この物語は結婚式の披露宴のスピーチから始まります。政権交代を通してスピーチライターの事を書いた本で、時代設定は少し古く、オバマ大統領や小泉政権の頃ですが、その設定がうまくはまっていて、しかも今らしさも出ていてよくできているなーという感じ。この中で、「…想像してみるといい。3時間後の君、涙が止まっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。3日後の君歩き出している。」はとても心に残りました。前向きにさせられ、また、納得させられました。心温まる本に出会えました。
(のぞみ 小倉)
『草枕』 夏目 漱石 著 新潮文庫 1994年
日露戦争の頃、三十歳の画家である主人公は、美しい娘、那美と出会います。那美は主人公が今まで見た中で、一番美しい女性でした。ある時、那美から近くにあるという鏡が池の話を聞きます。そして、近々その池に身を投げるかもしれないので、その様子を絵に描いて欲しいと頼まれます。主人公はその言葉に翻弄されながらも、彼女には何か足りないものがあると思い、その絵を描かずにいました。そして満州行きの駅のホームで足りなかったものに気づく主人公…。読んだ後の「すっきりしない感」もあって、逆にそこに惹かれました。文学というものの美学、表現するということが難しいと説いているように思います。
(のぞみ 加藤)
『ノラネコぐんだんと海の果ての怪物』 工藤 ノリコ 著 白泉社 2018年
絵本で最近人気のノラネコぐんだんシリーズの読み物です。8匹のノラネコぐんだんの海への大冒険はいかがですか? 本に出てくる生き物は、なじみのあるいきものばかりですが、幼い子供だけでなく大人の方も想像力も豊かになりますのでお勧めです。文字数は少ないですが、のんびりノラネコぐんだんと一緒に海の果てまで冒険を楽しんでください。ノラネコぐんだんはシリーズがございますので、そちらもお楽しみください。
(のぞみ 鳴田)
『からくりからくさ』 梨木 果歩 著 新潮文庫 2002年
嫁いだ娘の部屋にポツンと置いてあった1冊の本。それがこの本との出会いだった。亡き祖母の住んでいた古民家に孫娘の蓉子、遺品である市松人形のリカさんを中心に、さまざまな背景をもつ紀久、与紀子にマーガレットとの4人の共同生活がはじまった。昔ながらの丁寧な暮らし、草木染めや機織りの音が流れ、どこか懐かしく穏やかでゆったりとした時間が流れていく中、彼女たちの宿命的な繋がりの謎が、深まり少しずつ紐解かれていく工程にわくわく、ぞわぞわした。一語一語の表現が美しく丁寧で、噛みしめながら丁寧に読み進めたいと思った1冊でした。
(のぞみ 川野)