おすすめ図書の紹介(2023年2月)

『成熟脳 脳の本番は56歳から始まる』(黒川 伊保子 著)新潮社 2018年
 著者はAIの研究者。人工知能を作るためには人間の脳を知らなくてはならない。というわけで、脳に関する興味深い話が紹介されている。「脳は56歳で出力性能最大期を迎える」「ヒトは四十九日で立ち直る」「失敗は、脳の最高のエクササイズ」などなど。年をとると忘れることが多くなって…とつい悲観的になりがちだが、問題なし、まだまだこれから!と楽観的になれる本だった。

(事務局 石渡)

『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬 直樹 著)文藝春秋 1986年
 本書は猪瀬直樹が30代の時に執筆したノンフィクションです。
 昭和15年、対米戦争を想定して国家総力戦に関する調査研究を行なう総力戦研究所が設立されます。軍部や省庁、民間企業から有望な若手36名が集められ、所属組織から持ち寄った資料を基に物資補給、兵器増産の見通し、食料自給度など様々な角度から戦局のシミュレーションを繰り返しました。
 昭和16年8月、彼らが導き出したのは日本必負という結論でした。この結論は当時の近衛内閣に報告されたものの、その4か月後、日本は太平洋戦争に突入します。日本がその後辿った経緯は、真珠湾攻撃と原爆投下を除いて研究所が導き出した戦況と酷似していたといいます。

(事務局 岩澤)

『アヒルと鴨のコインロッカー』(伊坂 幸太郎 著)東京創元社 2003年
「広辞苑を盗まないか」大学に通うために一人暮らしを始めた青年・椎名に、河崎と名乗る全身黒ずくめの悪魔のような男がそんな話を持ち掛ける。現代と2年前、二つの物語が錯綜し、やがて一つの物語の結末へ収束する。タイトル名の由来もしっかり最後に回収します。筆者はこの本を皮切りに伊坂幸太郎にハマりました。どことなくさばさばした作風がお嫌でなければぜひ。

(けっして「カワサキ」というキャラが出てくるから選んだわけではないとある事務員)