おすすめ図書の紹介(2023年6月)

『卵の緒』(瀬尾 まいこ 著)新潮文庫 2007年
「僕は捨て子だ」ここから始まる。小学4年生の育生(いくお)と母は本当の親子ではない。へその緒がない理由は、「育生は卵で産んだから」。育生が聞くたびに、いつも母は笑いながら答える。何気ない日常は、しっかり者の育生とゆかいな母を中心に過ぎてゆく。ある日、ついに母は育生と初めて出会った時のことを「最初で最後」と話し始める。その母のまっすぐな思いは育生に届いている。へその緒なんかなくても愛情は変わらない。親子とは何か。家族とは何か。絆とは何か。
 私は今回、数年前に読んだこの本を読み返した。血のつながりよりも大切なことを改めて考えさせられる物語。著者の本は、いつも心がほっこりと温かくなる。

(出版 S)