おすすめの図書(2024年2月)

『Iの悲劇』(米澤 穂信 著)文藝春秋 2019年
「○○の悲劇」というからには殺人事件が起きて名探偵が現れて最後に犯人が判明して…と想像したのだが、そういう小説ではなかった。
 一度無人になった集落を甦らせるべくIターン支援プロジェクトが始動し、移住者がやってくる。しかし一人去り、二人去り、住人はいっこうに増えない。プロジェクトの行方や如何に。
 血なまぐさい事件が起きるわけでもなく、飄々とした語り口につられてつるつると読み進んでしまったが、ある意味とても深刻な内容だ。年明け、テレビや新聞を見るたびになぜかこの小説が頭に浮かんできた。

(事務局 石渡(いしわた)) 

『禁色』(三島 由紀夫 著)新潮社 1951年     
私が最後まで読み終えることができた唯一の三島由紀夫作品です。
自分を裏切ってきた女性たちに老作家が復讐していくという内容で、その復讐に利用されるのが同性愛者の美青年の大学生。しかし、青年の美貌と肉体はあまりにも完璧で、そのことで様々な誤算が生じ、周りの人々を狂わせていきます。
 難解な言い回しが出てきて、私には意味の分からない部分も多かったですが、その語感はとても端正で品があります。ストーリー的にもインパクトの強い作品でした。

(事務局 岩澤(いわさわ))