おすすめ図書の紹介(2019年1月)

 おすすめ本を書くにあたって、随分前に読んだきりだったので読み返してみた。「あれっ、この本サスペンスのジャンルだったっけ?」と思わず疑ってしまう、貴志(きし)祐介(ゆうすけ)の『青の炎』が私のお気に入りである。好きな文章を抜粋しようと思いましたが、長くなるので止めます。

 秀一(しゅういち)は、湘南の高校に通う17歳の少年。母と妹と3人穏やかに暮らしていた。ところが突如、平和を脅かす傍若無人な男が自宅に居座った。母が再婚し直ぐに離婚した曽根(そね)である。離婚したのは秀一を曽根の暴力から守る為だった。居座った曽根は母だけでなく妹にまで暴行を働こうとするのだった。愛する家族を守る為に曽根をこの世から抹殺することを決意した秀一。考えて考え抜いた完全犯罪の計画は完璧だったはずだったのに…。実は、鍼灸用のディスポ鍼を左脚の三里のツボに刺してしまったのも、計画がほころびた要因の一つだったのだ。秀一が、愛する家族を守る為に選んだ結末はあまりにも切なく哀しい、そういう作品です。この作品は映画化されています。

 監督は、今は亡き蜷川(にながわ)幸雄(ゆきお)氏。秀一は演技にも定評があるアイドルグループ嵐のメンバー、二宮(にのみや)和也(かずなり)。傍若無人な曽根は、あのデザイナーの山本寛斎(かんさい)。警部補には中村梅雀(ばいじゃく)。なかなか面白いキャスト陣だ。山本寛斎が傍若無人な曽根を上手く演じている。

*近年のDVDは特別な操作なしで、音声ガイド付きが再生される。この作品はかなり古いので、その対応はされていないと思うが、本を読んでからだと音声だけでも楽しめるのでは? と思う。

 本には無いが、秀一が最後の日に片手で壁や家具を撫でながら歩き玄関に向かう場面は、この家を離れたくない、二人を残していきたくない、でも二人をメディアから守る為、行かなければいけない、決意しながらも心残りのような。最も心に残ったシーンである。

 おすすめ本なのか? おすすめDVDなのか? 変なご案内になってしまいましたが、本を読んだ後にDVDも有りかも。と思う今日この頃です。

(のぞみ 小倉(おぐら))